バイオリン・才能と音楽性はどうやって分かるの?

才能と音楽性 はどうやって分かるのか

長年バイオリンを教えていると、親御さんから色々な相談を受けます。

先生に音楽性がない、才能がないから上達しないと仰る先生がたまにいらっしゃって、「うちの子には才能がないからバイオリンを続けるのは無理なのでは、音楽性がないから音楽ではなく他の道へ進んだ方のが良いのでは?」と考える親御さんがいらっしゃいます。

音楽性や才能は育てる事も出来ますし、小さい頃には大きくなった時の事など分からないのに、誰かの一言がきっかけでやる気を失ってしまったり、止めてしまう事ほど残念なことはないと思います。

ここでは、どうして親は音楽性、才能よりもお子さんのやりたい、楽しいという気持ちを優先してあげる方が良いのかを説明しています。

あくまでも、長年バイオリンを勉強する子供たちを見たり、バイオリンを教えてきてたどり着いた筆者の考えです。

参考程度に読んでいただければと思います。

才能とは

バイオリンは3歳、小学校低学年の頃から始める子が多く、その中には音楽をやるために生まれてきたのかな?と思ってしまうほど凄い勢いで色々な事を覚えたりリズム感が良かったり、歌心があるお子さんがいる事は確かです。

そして、先生が弾くお手本をいかにも簡単に真似してしまう子もいて、身体能力が良かったり真似が上手な子はどんどん上達します。

一方、全てを理解して納得しないと先へ進めない子、先生の説明が分からずなかなか上達しない子もいます。

しかし、小さい頃になかなか上達しない子でも、

・中高生になって今まで蓄えていたものを少しずつ発揮してメキメキと伸びる子

・中高生になって自分の演奏は何かが違うと思い、色々と研究してあっという間に上手になる子

・ダラダラとレッスンを続けていたのに、大学生からバイオリンに目覚めて色々な先生を探し大人になってバイオリンを仕事にして楽しい人生を送っている子

本当に小さい頃に上達が遅くても大人になった時にどうなっているかはその子が何を望み、子供や親がどう行動するかで変わってきます。

バイオリン、音楽の世界には稀に小学生なのに驚くほど上手な子がいますが、彼らは教えたことを吸収するのが速いのは確かですが、上達する練習、いかに間違えないで弾くか、どう歌ったら上手に聞こえるか等を分かった練習を毎日何時間もしています。

幼稚園、小学校低学年で毎日何時間も練習出来るのも才能と言えば才能ですが、小さい子が一人で練習を何時間もする訳ではなく、親がその子に合った先生を探し、親や先生がいかに楽しく練習出来るか、どうしたら上達する練習が出来るかなど、目的地へ導いてくれる存在がいるからこそなのです。

小さい頃に上達するには、子供のやる気をいかに出してあげるか、そして、上手な指導者、上達する練習環境、金銭的な事も揃う必要があるので、難しいですが、小さい頃に開花しなくても大きくなってから急激に上達してプロの道へ進む子もいるので、小さい頃の進度よりも音楽が好き、やりたい気持ちを大切にどうしたら上達出来るのかを探すことをおすすめします。

小さい頃の進度は重要だけど重要ではない

幼稚園、小学校のうちに1日何時間も良い練習をした子が、順調に伸びていく場合、高校生くらいで目覚めてもなかなか追いつかないのが現実です。

 

しかし、音楽に大事なのは技術だけではなく、音楽性、観客をどれだけ魅了するかが大事です。

なので、好きという気持ちがあれば大きくなってから自分はバイオリンんでどう表現していくか、どうやって観客、お客様を楽しませるか、喜ばせるかを考えて行動に移せれば、小さい頃に才能があるからともてはやされた子よりも好きなバイオリンを仕事にして幸せに過ごせることもあることを忘れないでください。

 

小さい頃に才能があると言われてソリストコースへ進んだ子が大きくなって伸び悩み、20歳くらいでコンクールで結果は出ない、最終的には自分が思い描いていいた成功を収められずに小さなコンサートで演奏する事に喜びを感じられない。

ヨーロッパの話ですが、音楽院の先生になり、でも本当はソリストになりたかったのにと教える気力もなく、生徒に愚痴をこぼすという先生もいらっしゃるのが事実です。

筆者の生徒さんにも、「賢くないから上達しない」と言われてバイオリンをやめた方のがいいのかと相談された子がいました。

小学校高学年で音程は取れない、ビブラートはかからない、トリルも全然出来ない。

レッスンも始めの頃は週に4回、毎回2時間のレッスンで基礎からやり直し、練習方法も教える事約3年。

コンクールで奨学金を得たり、マドリードの音楽院のプレカレッジのソリストコース、フィレンツェ音楽院の早期入学生として満点合格出来るまで成長しました。

音程が取れなかったり、曲が仕上がらないのは、賢くないからではなく、音程を理解していない、音程の取り方を知らない、練習の仕方を知らないからであって、バイオリンが好きで落ち着いて毎日2-3時間根気よく練習出来る環境があれば、いつからでも学べて必ず上達します。

小さい頃に才能がないと言われて開花した人たち

才能や音楽性など小さい頃には分からないという事を知って欲しいので、有名な方の例もあげておきます。

イタリア人作曲家、指揮者、ピアニスト、作家として大活躍しているジョヴァンニ・アレヴィは、若い頃、有名なヴァイオリニストに音楽院で習った時に君は才能がないからと言われたそうです。

しかし、大人になって作曲家、ピアニスト、指揮者など、色々な分野で大成功を収めています。

オペラの大作曲家、ジュゼッペ・ヴェルディ。

今ではイタリアの国歌とも愛されるほどの曲を作曲し、お正月のコンサートでは必ずヴェルディの曲を演奏していますが、若い頃はミラノの音楽院を受験して、「ピアノを弾く時の手の形が正しくない、対位法の理解度が足りない」などを理由に入学試験に通らなかったという話が有名です。

なので、有名な音楽家だろうが、音楽院、音楽大学の偉い先生だろうが、子供の将来は分からないのです。

子供がもし音楽が好きで続けたい、上手になりたいと言う場合は、音楽性がないから無理、才能がないから無理ではなく、その子の良い所を楽しく伸ばしてあげられる先生を見つけて子供を応援してあげてください。

他人に何と言われても親が一番の理解者でサポーターであってください。

音楽性について

音楽性も才能と同じで、いくらでも伸ばすことが出来ると思っています。

 

赤ちゃんが生まれて話すまでには、周りの人達が話すのを見て聞いて、少しずつ言葉を覚えるのと同じで、音楽性はプロの演奏者の良い演奏、色々なジャンルの音楽を聞くことで歌い方、リズムの取り方などは身に付きます。

小さい頃から音楽が流れて良く歌ったり何かを叩いてリズムで遊んだりして育った家庭と、あまり音楽を聞かずに育った家庭では成長過程で音楽性に違いが出てきます。

我がやは小さい頃から色々な音楽を聞かせ、遊びながら一緒に指揮者を真似てみたり、公園で枝を拾って一緒に何かをドラムのように叩いてリズムで遊んだりしました。

一緒に歌ったり、踊ったり。

なので、もし音楽性がないと言われたら、色々な演奏を聞いたり、ポップスやロックなどを聞いてリズムを取ってみたり、好きな歌手と一緒に歌ってみたりすると、少しずつ音楽性は身に付きます。

耳を育てる

バイオリンは自分で音程を取り、音を作っていく楽器なので、耳も育てる必要があります。

自分が練習している曲の色々な人の演奏を聴いてみると、この部分はこの表現の方が好きなど、自分の好みが分かってきます。

練習している曲を聴くなという先生がいらっしゃいますが、楽譜を見て曲を想像できないのは、赤ちゃんが文字を見て発音出来ないようなもので、色々な演奏家の演奏を聴き、楽譜と照らし合わせることで、少しずつどう弾いていきたいかが分かってきます。

最終的には楽譜を見て自分はどう表現していきたいかを考えられるようにしますが、楽譜を見て音楽を想像出来るようになるまでは時間がかかるので、分からないうちは色々な演奏家の演奏を見て聞いて真似してみたり、批判してみたり。

色々な演奏を比べることで、自分の好みも分かりますし、耳も育ちます。

焦らず少しずつ理解していけばいいと思います。

「音楽性・才能がない!」と言われてもバイオリンが好きなら、自分が思い描く将来を実現するためにはどうしたら良いかを考えて新しい指導者を探す、自分のやりたい気持ち、心に従うと才能が開花するかもしれません!

親御さんは、誰が何と言っても自分の子供を信じてサポートしてあげてください。