バイオリンは、自分で音程を“作る”楽器。
左手の指はミリ単位で場所を決め、右手は別の動きで弓を操る──これを同時にこなさなければなりません。
実際、器用な子、運動神経の良い子はバイオリンを始めてからスムーズに上達したりします。
でも慎重派の子や運動が得意でない子にとっては、これが大きな壁になります。
コツさえ掴めば、世界は変わる──でもそこにたどり着けない子が多い
弓の毛で弦をこすれば音が出る。
原理は単純なのに、バイオリンを始めたばかりの頃は真っ直ぐボーイングを意識しすぎて、余計な力が入ってしまいます。
私自身もたくさん遠回りしてきました。
そして、そんな子どもたちを数多く見てきました。
「不器用だから」「向いていないから」そう言われて、諦めてしまう子もみてきました。
大人も「もう歳だから上達しない」と言われて、希望を失っていきます。
「才能がない」と言われ続けた12歳の少女
ある日、私の元に来た相談。クライスラーの「プレリュードとアレグロ」に挑戦していた12歳の少女。コンクールに出ても結果が出ず、ヨーロッパ各地の先生に習ったものの──
- 「賢くないから上達しない」
- 「練習しないから無理だ」
そう言われ続け、自信を完全に失っていました。
診断してみると…
- 練習の仕方がわからず、ただ「何となく」弾いていた
- 出来ない所をどうしたら出来るようになるのかが分からず無我夢中で弾いているだけ
- 基礎がまったく身についておらず、音程も、ボーイングもバラバラ
曲は弾いている。でも、音楽にはなっていない。演奏中にいつ演奏が崩壊して止まってしまってもおかしくないそんな状態でした。
将来の夢は「音楽院で学び、バイオリンの先生になること」
私はご両親と彼女に上達する道筋を提示しました
「基礎からやり直すこと、練習メニューを作って規則正しく練習をすること」
親御さんは練習に付き合うと喧嘩になってしまうし、いう事を聞かないということで、1回2時間、週4回一緒に練習することに。
(この生徒さんは整理整頓が全く出来ていなかったので2時間ですが45分のレッスンを週4回、週2回、1回でも基礎を鍛え直すことで確実に上達していきます)
ひたすら同じ練習を何ヶ月も繰り返し、左手の形、ボーイング、音の聴き方…。すべてを基礎からやり直しました。
基礎は続けつつ、基礎や練習曲で学んだことを曲でどう使うかを教え、少しずつ曲のレベルをあげていきました。
そして2年後──世界が変わった
- クレモナのコンクールで奨学金獲得
初めは人前で弾くのを嫌がり、発表会も嫌な顔をしていましたが、少しずつ上達することで、「次の発表会はいつですか?」と、楽しみになるように。
3年後
- フィレンツェ音楽院(大学)に若いタレントコース早期入学合格
- モスクワ音楽院プレカレッジで全額奨学金獲得試験合格
その他の音楽院にも合格するまでになりました。
「才能がない」と言われていた少女は、世界の舞台で学ぶ道を手にしたのです。
まとめ:上達できないのは才能のせいじゃない
「バイオリンは難しい」──それは確かです。
でも、正しい練習方法を知って、自分に合った環境でコツコツと積み重ねれば、必ず道は開けます。
長い目で見ると、小さい頃に音楽性もあって、上手だなと思う子であまり練習しない子よりも、器用ではないけれど、上達したくてどんどん練習する子の方のが伸びたりするものです。
もし今、あなたやお子さんが「もう上達しないかも」と悩んでいる。
大人の方で大人から始めたから無理なのかなと思っているなら、それは“才能の限界”“年齢的な問題”ではなく、“練習の方向”が違うだけかもしれません。
バイオリンが好きで上達したいと思ったらその時に必要な先生に出会う事。
インターネットが発達した現在、良い先生と出会う事は10年前よりも簡単になっています。
諦めなければ道は必ずあります。