バイオリンを習っていると、曲の進度が早いのか遅いのかが気になるものです。
同門の発表会で、他の子の曲の進度は大体分かっているつもりでも、コンクールに出てみると、飛びぬけて上達が早い子、飛びぬけて上手な子がいて、「我が子の曲の進度はこのスピードで大丈夫なのだろうか?」と思ってしまう事があります。
「将来音楽の道へ進むかも?」と考えると、他の子の曲の進度は気になるもの。
実際は、「趣味でやっているから楽しければいい!」と思っていても、曲の進度は気になると言う方が多いものです。
そこで、約30年間バイオリンを指導した経験を元に、バイオリンの曲の進度や練習時間について筆者の考えをまとめました。
バイオリン曲の進度
曲の進度には教える先生のお考えがあり、曲の完成度をかなり上げないと進ませない先生、ある程度仕上がったら新しい曲を取り入れつつ前の曲の完成度を上げていく先生。
色々な進め方があるので、これが正解というものはありません。
他の先生のお考えは分かりませんが、筆者はあまり完璧を求めずにある程度出来たら先に進める派です。
何故かというと、色々な曲をやってから昔の曲に戻ると楽に弾けるようになっているので、完璧を求めて一つの曲を長く練習するよりも、平行して数曲を続けさせたり、とりあえず先に進んで戻ったほうのが効率よく上達出来ると経験上感じているからです。
ヨーロッパではあまり先に進ませることを好まない先生方が多いので、あくまでも筆者の経験を元に筆者の考えを書いてありますので、参考程度に読んでください。
ソリストを目指す場合
世界で活躍するようなバイオリニストにと思ったら、スズキメソッドの教本の1巻はしっかりと時間をかけて学んでも、その後は年に2~3巻を進む勢いで進み、小学生のうちからモーツァルトの協奏曲、バッハの無伴奏パルティータ、その他の協奏曲やソナタ、ヴィルトゥオーゾ曲を練習します。
音階は1巻の頃から教本の中にある簡単な音階から始めます。
そして、曲が進んでくると、重音も加わり、小学生のうちから10度、そしてフィンガードオクターブも練習します。
これに加えて、練習曲も曲と平行して練習します。
ざっと上げると、シェフチーク、シュラディック、カイザー、マザス、フィオリッロ、クロイツェル、ドント、ローデ、ヴィエニャフスキ、パガニーニなどのカプリスなども曲と平行して練習します。
これだけの量を進めるので、バイオリンが上手な子、進みが早い子というのは、とにかく練習量が違います!
練習量だけでなく、レッスン時間やレッスンに通う回数も違います。
クラッシックの演奏家を目指す小学生は、一日少なくとも2-3時間、多い日には5-6時間練習します。
プロを目指さない子でも、コンクールで入賞したいと思うならば毎日2時間は練習しないと入賞するのは難しいのではと思います。
日本ではプロのバイオリニストになるのに8ー10時間以上練習するという話を聞きますが、個人的には効率よく練習すればそこまで時間はかからないのではと思います。
何故なら、ヨーロッパの教育方針を見ていると、バイオリンの練習に10時間も取るなら、美しいものを見たり、自然を満喫して感性を豊かにしたり、他の事を学ぶことで演奏表現の幅が広がると思うからす。
小さい頃に練習するメリットとデメリット
バイオリンの練習を3-6時間と聞いて、そんなに練習出来ない!と思う方は多いと思います。
しかし、やるべき曲を弾いていると数時間はあっという間に経ちます。
そして、大きくなってからいくら頑張って練習しても、小さい頃に良い練習を沢山した子にはテクニック的にはかなわないので、プロのソリストになりたいと思う子は小学生の頃からかなりの量の練習をするのです。
小さい頃の吸収力は本当に凄く、大きくなって学ぶよりも、小さい頃のほうのがあっという間に色々なテクニックを吸収します。
しかし、時間の長さだけに拘り過ぎて中身のない練習をするのは時間の無駄なので、小さい頃には周りのサポートが必要となります。
親御さんの時間管理や声がけ、精神的なサポートで練習の質がかなり変わります。
それから、本人の強い意思で練習をしていればいいのですが、やらされて練習をしていると、覇気のないつまらない演奏になってしまうことも。
なので、本人のやる気を大切にして、本人が「プロになりたいから練習する!」と言う気持ちをいかに維持できるかをサポートしてあげることも大切です。
プロの演奏家ポップの場合
演奏家と言っても、ポップミュージックの演奏家を目指す場合は、いかに曲を魅力的に聴かせられるか、自分をどうブランド化出来るかが重要になってきます。
クラッシック音楽はテクニック的に難しく、小さい頃にある程度練習していないと弾けない曲が出てくることもありますが、ポップミュージックの場合、テクニック的にクラッシック音楽よりも簡単です。
なので、もちろん練習はしますが、小さい頃の練習の質と量というよりも、自分をいかに魅力的にみせられるか、どれだけ音楽性があるかが重要となります。
なので、ユーチューブで活躍したり、ポップミュージックの演奏家になる場合は、クラッシックの演奏家になるような長時間の練習量がなくてもなれる可能性はあります。
バイオリンが好きで人前で演奏するのが大好きなら、大きくなってからでもユーチューブなどを使い試行錯誤をし、自分の道を切り開いていくと思います。
ここで重要なのは、好きという気持ちです。
好きだけではどうにもならないと言う人もいますが、好きな気持ちが大きければ、好きな事を突き詰める力はいくらでも湧いてきます。
音大を目指す場合
音大を目指す場合、音大のレベルにもよりますが、小学生の時にあまり練習せず、中学生から頑張って3-4時間練習に変更しても間に合います。
何故かというと、中学生の時に音大へ行きたいと思い必死で練習をすれば、まだ体が固まっていない成長段階で吸収力が凄いので、間に合うのです。
しかし、この時大切なのは、正しい基礎を教えてくれる先生についてしっかりと基礎を習得すること、入試までに入りたい音楽大学の課題曲が美しく弾けるレベルになるためには何をすべきかを考えて計画を立てて効率よく練習することです。
美しく弾けると書いたのは、弾けるだけでは音大入試に合格しないからです。
いくら難曲が弾けたとしても音程が滅茶苦茶だったり、音が汚かったり、基礎が出来ていない子は音大へ入っても伸びないので、試験に落ちてしまう確率が高いです。
逆に、しっかりとした基礎を身に着けると、いくらでも伸びるので、音大入試時に飛びぬけて上手くなくても合格する可能性があります。
高層ビルの基礎がしっかりしているのと同じで、しっかりした基礎の上には超高層ビルを建設出来るように、基礎がしっかり出来ていれば大きくなってからでも上達します。
しかし、基礎が出来ていない上に難しい曲を弾き続けてもあちこち崩れてくるのを直しつつ苦労して仕上げるので、いつまで経っても思うような演奏は出来ません。
オーケストラ奏者になりたい
オーケストラ奏者といっても、ソリストと同じで色々なレベルがあります。
ウイーンフィルのような有名なオーケストラの場合は、難しいですが、地方のオーケストラの場合、大学のサークルがきっかけでバイオリンを始めてオーケストラ奏者として働いている人もいます。
なので、どこのオーケストラと拘りがなければ、小学生の時にあまり練習しなくても、オーケストラ奏者として働きたいと思い立った時に必死にオーケストラ奏者入団試験に必要なスキルを必死に勉強しても間に合うと思います。
小学生の時にあまり練習しなくてもと書きましたが、小さい頃から毎日少しでも練習する習慣をつけておくこは、他の分野でも役立つので、始めたからには毎日少しでも楽器に触るようにしてくださいね。
プロは目指さない
あまり練習出来なかったり、練習してこない生徒さんでもスズキメソッドの教本なら1年に1巻くらい進める程度を目安にしています。
何故なら、プロを目指さないとはいえ、全く曲が進まなかったら楽しくなくなってしまいます。
なので、練習をしてこなければ、レッスンでポイント練習をさせてどうにか弾けるようにさせ、先へ進めると、色々な曲が弾けるようになり、練習するのが楽しくなってきます。
まとめ 【バイオリンの練習量と曲の進度】
曲の進度の目安は、
・自分が目指す目標を考えて、それに間に合う早さで進んでいるかを考える。
・音大へ行きたいと考えているなら、行きたい音大の入試課題を見て、音大入試時にその課題曲が弾けるレベルになっている速さで進まなければなりません。
・同年代の子の曲の進度を見て比べてみる。
練習時間は、
・クラッシック音楽のソリストになりたいと考える子は、小学生の頃から2-3時間、多く弾ける日は5、6時間練習しています。
・音大へ入りたい、オーケストラ奏者になりたい場合、中学生くらいから頑張っても間に合いますし、高校生から頑張っても間に合うケースもあります。
・趣味の場合、少しでも毎日練習することとはいえ、気が向いた時だけでも大丈夫です。