イタリア音楽院の入学試験とは?フィレンツェ音楽院バイオリン科を受験して感じたこと

イタリア音楽院

先日、娘がフィレンツェ音楽院(Conservatorio di Firenze)のバイオリン科入学試験を受験しました。

これからイタリアの音楽院を目指す方の参考になればと思い、試験内容や当日の様子、日本との違いなどをまとめてご紹介します。

イタリアの音楽院入学試験

ここ数年、イタリアの音楽院では入学、卒業試験の内容が以前より少し簡単になったと感じています。

それでも、日本と比べると一度の試験で準備する曲数はかなり多いと感じます。

娘が小学生の頃にアドバンスコースへ進むために受けた試験では、

  • シュラディック
  • 音階(長調・短調)
  • 練習曲2曲(性格の違うもの)
  • 協奏曲第1楽章
  • ソナタ
  • ヴィルトゥオーゾ作品

などを演奏し、試験時間は40〜50分ほど。

「弾くだけでも疲れた」と話していましたが、それを何十人も聴く先生方も本当に大変だろうと思ったことを覚えています。

フィレンツェ音楽院バイオリン科の試験内容

今回の試験課題は次のとおりでした。

  • 音階(全ての長調、短調から当日指定)
  • 練習曲(クロイツェル、フィオリッロ、ロード、ドントOp.35から性格の違う3曲)
  • バッハ無伴奏ソナタまたはパルティータ(性格の違う2曲)
  • 15分以上の自由曲1曲
  • 初見演奏
  • 面接

どの国の音楽院でも音階はありますが、使用する教本や弾き方は国によって違います。

イタリアでは3オクターブ音階を、まずロングトーンで歌うように演奏し、その後スラーでも演奏します。

当日はすべての長調・短調から指定される可能性があるため、すべての調を練習して準備しました。

初見対策としてはオーケストラスタディの楽譜をを購入して練習するように元音楽院教授から聞いていたので、練習して準備をしました。

練習曲・バッハは自由に選べる

練習曲は

  • クロイツェル
  • フィオリッロ
  • ローデ
  • ドント Op.35

の中から性格の異なる3曲を準備します。

バッハも無伴奏ソナタまたはパルティータから自由に選択できます。

※この試験に通ると和声連結、簡単な楽譜のアナリーゼ、楽典、聴音、音楽史、ピアノの試験が9月に行われます。

「15分以上の曲」の解釈がイタリアらしい

今年の課題には

「15分以上の曲1曲」

と書かれていました。

1曲と書かれていたので、例年は協奏曲第1楽章だったため、

「15分以上のコンチェルト1楽章といったらチャイコフスキー協奏曲くらいしか思い浮かばないな?」

と思ったので、今回はソナタ全楽章を準備しました。

先生に確認すると、

「2曲合わせて15分でもいいし、1曲でもいいですよ。」

とのこと。

ところが他の受験生に聞くと、

「たぶん例年通りコンチェルトのことじゃない?15分以上なんて書いてあったっけ?」

「募集要項の書き間違いじゃない?」

と言って15分未満の曲を持ってきていました。

そして実際、そのまま問題なく試験を受けていました。

「さすがイタリア!」と思わず笑ってしまった出来事です。

当日の試験会場はかなりカオス

日本との一番大きな違いは試験当日でした。

午前・午後の受験生全員が朝に集合。

ちなみに、もう大学生になるから一人で行くべきじゃないかと言ったのですが、「まだ高校生だから付き添ってもいいのでは?」夫が言うので私も一緒に行くと、他の親御さんも来ていて流石イタリアだなと思ったのです。

演奏者、伴走者、親が廊下に集まるので、廊下は物凄い人数でごった返していました。

試験が始まる前には

  • 試験順の紙は貼り出されない
  • 待合室もない
  • 廊下で立ったまま待機(午後の人は午後戻るように言われていたので、残ったのは午前中組です)
  • 順番は先生がタブレットで見せるだけで、その場にいた生徒さんに写真を撮ってもらいその子が皆に見せて回っていました

という状態。

午後の受験生の伴奏者が午後は予定があるからと午前中に変更してもらったり、

さらに欠席者が出ると順番も変わります。

朝来なかった受験生が自分の順番が分からず廊下を歩き回っていたり…。

かなりイタリアらしい雰囲気でした。

ただし、すべての学科が同じではありません。

声楽科は応募人数が多いため動画審査があり、対面試験に進める人だけが時間指定されていました。

お友達で受験予定のピアノ科に聞くと、事前に順番が発表されていたそうです。

試験官はとてもアットホーム

運営は少し大らかですが、試験官の先生方はとても親切でした。

譜面台の高さを調整してくださったり、

「好きな曲から弾いていいよ。」

「音階も好きな調でいいよ。」

と緊張をほぐしてくださったそうです。

結局、

  • 音階は1つ
  • 練習曲も1曲
  • バッハも1曲
  • 曲も少しだけ演奏

だけで終了しました。

初見はなく、面接も和気あいあい。

試験官によって違うとは思いますが、思っていたよりずっとリラックスした雰囲気でした。

イタリアの試験を受けて感じたこと

日本ではコンクールや試験当日の流れが細かく決められていることが多いですが、イタリアではその場で状況が変わることも珍しくありません。

だからこそ、

「イタリアだから、こういうこともあるよね。」

くらいの気持ちで受験すると、余計なストレスを感じずに済むと思います。

イタリアの音楽院は、日本とは試験の進め方も雰囲気も大きく異なります。最初は戸惑うこともありますが、先生方との距離が近く、音楽そのものを大切にする空気を感じられるのも魅力です。

これからイタリアで音楽留学を考えている方や、フィレンツェ音楽院の受験を予定している方の参考になれば嬉しいです。