音大に行く意味はある?卒業後どうなる?音大卒→留学経験者が語るリアルな進路と可能性

音大に行く意味はある?

小さい頃からピアノやバイオリンを習っていると、進路のひとつとして「音大」が頭をよぎる人も多いでしょう。

そして、親御さんの立場でも「音大って本当に行く意味あるの?」と悩む方は少なくありません。

 

なぜなら、音大は4年間の学費に加えて、レッスン代、楽譜・教科書代、伴奏者への謝礼など、非常に高額な費用がかかるからです。

とくに弦楽器では、試験や演奏会ごとに伴奏者が必要なので伴奏代もかかります。

更に、一人暮らしもするとなった時には合計すると東京で中古ワンルームマンションが1つ買えるほどの金額になることも。

 

そのため、リターンを考えると「そのお金を他のことに使ったほうがいい」と感じる保護者の方も多いのではないでしょうか?

筆者は一度就職を経験した後、「バイオリンが好きだから、そして子どもが生まれたら在宅で仕事がしたい」という思いからバイオリンを教える道を志しました。

 

初めはスズキメソードの指導者養成コースに入りスズキメソードで指導者を目指しましたが、当時習っていた音大の先生が

「音大へ行くのは、技術だけじゃない。人とのつながりを作るために行くんです」そう言われ、自分の未来を見つめ直しました。

 

社会人として音大受験をしたのですが、そのような人が私の他にも数人いました。

ちなみに、先生が指導されていた音楽大学ではなく、息子さんが行って「本人も親目線でも良かった!」という音大をすすめられたので説得力がありました。

 

音大在学中は、

・テレビでのバック演奏の仕事

・ヤマハ音楽教室での講師

・冠婚葬祭での演奏

・オーケストラのエキストラ等

学校の先輩や友人、先生とのつながりから多くのお仕事をいただき、沢山の経験をすることが出来ました。

音大へ行くことで知人を通して音楽の仕事の依頼が来る可能性が広がります。

そして、大学で知り合った友人、先生つながりで海外留学もスムーズに進めることも出来ました。

自分の経験や周りの友人を見ていると、次の可能性に進む通過点だったのかなと思います。

音大には様々な目的で進学する人がいる

「あなたは何故音大へ行きたいのですか?」と問われた時、色々な答えがあると思います。

・ソリストを目指したい

・指揮者になりたい

・音楽療法に興味がある

・ミュージカルや舞台に携わりたい

・音楽の企画運営に関わりたい

・オーケストラに入りたい

・学校の音楽教師になりたい

・自宅で音楽を教えたい

・ただ単に音楽が大好きで、4年間音楽に集中したい

・○○音大を見学してどうしても○○大学で過ごしたいと思った

など、どんな理由であろうと自分が「なぜ音大へ行きたいのか?」を明確にすることが、後悔しない進学の第一歩です。

「音大へ行っても食べていけない」

そう言われることもあります。

しかし、音楽家はサラリーマンになるというよりも自ら仕事をつくる職業だと思っています。(音楽療法士は病院に就職します)

そして、大学は人生の通過点であり、音大卒業後も学んでいく必要があり、「卒業」で満足してしまう人とその後も学び続け試行錯誤した人では音楽で収入を得るという分野では大きな差が出ます。

 

音大は将来の土台をつくる一つの場であり、誰と出会い、どう動くかで将来は変わります。

音大に行くか迷っているなら、「行けば人生が保証される場所」ではないことは確かです。

 

大切なのは、

・なぜ行きたいのか

・どんな人生を描いているか

・音楽に何を求めているか

あなた自身の「答え」を見つけてください。

 

音大で出会った仲間たちとは、卒業して何十年経った今もつながりがあります。

共に悩み、学び、音楽を通して築いた関係は、一生の宝物です。

 

大学の4年間は音楽のことだけを考えられた本当に楽しい幸せな日々でした。

そして、現在好きな街で暮らし、バイオリンを練習して食べて行かれているのは、音大へ行ったからでもあります。

音大卒業後のどんな仕事につきたいのか?

大学に行くとき、将来の仕事のことを考えると思います。

しかし、どんな道があるか分からないという人のためにどんな職業についているかを書き出してみました。

 

私の周りには、音大卒業者や、卒業後に留学した友人知人がたくさんいます。

音大卒業、留学後

・プロオケ団員

・教会や美術館のコンサートで演奏している人

・スポンサーを見つけてコンサートを開催している人

・自分たちで室内楽グループを作って演奏会を開催している人

・ヨーロッパの音楽院の先生になった人

・学校の先生

・音楽教室を開いている人

・音楽療法士

・日本とヨーロッパで舞台通訳

・コンクールや音楽院のピアノ伴奏者

等々

 

音楽以外の職業

もしくは、音楽とは関係なく卒業後に新しい職を手に付けた人。

ヨーロッパまで音楽を学びに来て、ヨーロッパでラーメン店を一から開いた人。

エステサロンを開いた人。

ちなみに、過去のフィレンツェの市長は音楽院を出た後に他の大学へ行き政治家になった方です。

 

将来どんな仕事がしたいかを考えるとき、自分が一番大切にしていることは何かを明確にすることが大切です。

この「大切なこと」が叶うなら、音大卒業しても音楽関係の仕事にこだわる必要はないと思います。

 

何故なら、初めに決めた目標は変わっていくこともあります。

そして、結婚して子供が生まれるとライフスタイル、自分にとって大切なものの順番が変わったりするからです。

子供が小さい頃の私にとって大切な事は、毎日バイオリンが弾けて子供との時間が取れる事。

なので、冠婚葬祭の演奏、バイオリンレッスン、通訳の仕事、貿易事務、日本語講師など、柔軟に仕事を選んで働いていました。

 

毎日の練習をコツコツとこなし、レッスンには遅刻厳禁。

時間管理がしっかりできる音大卒業生は、面接で自分をしっかりアピールできれば、一般企業への就職の道もあると思います。

 

実際、私は面接の際に

・音大卒業生は時間に正確

・小さい頃から楽譜を暗譜しているので、何事でも覚える事は得意

・面倒な事でもコツコツとこなしていく力がある

・どんなことでも出来る

等とアピールすることで音楽以外の企業でも採用されてきました。

音大に進むべきか迷っている方へ

 

我が家の場合、子供が「音大に行きたい」と言った場合、

・音大へ行かなくても音楽家になる道はある

・音大へ行って本当に学びたい事が学べるかは分からない

などを話し、それでも行きたいという場合は、「国立、もしくは奨学金で行くなら」という条件をつけて行かせます。

 

音楽が大好きで、4年間音楽のことだけに集中できる環境は、とても幸せな時間になるはずです。

人生で本当に大切なのは「時間」。

お金は後からなんとでもなると思っています。

とはいえ、ヨーロッパの国立の大学や音楽院は日本に比べると比較にならないほど安いです。

なので、日本の私立の音大に入れるのに抵抗を感じるのも本音です。

私の経験が、進路選択に悩む方のヒントになれば嬉しいです。